愛国とアメリカ
2003年5月25日
日本人がバブル経済で踊り出す前、私達が簡単には外国に行く事が出来ない時代、「いわゆる文化人」が外国旅行から帰ってくると、その中の多くの人達は“日本にいたときは「日の丸」や「君が代」に批判的だった自分が、外国へ行くと何故か愛国者に変わってしまう。”と語っていたものでした。
でも、そのように語っていた方々は、確かに日本では立派な文化人と評価されていましたが、国際的な評価は無かったと記憶しています。
私は、このような「えせ文化人」の発言を聞かされる度に「子供の喧嘩」を思い出しました。
“お前の母さんデベソ!”これに対抗して“お前の父さんチンドン屋!”と相手の親を罵り合ったものでした。
(なにしろ子供には、自分の家族以外には、誇れる自己が無いのです。)
そして、成長するにつれて、「家族」の次は「学歴」が、そして「肩書き(企業の大小、地位)」が、自己の誇りとなって行きます。
(更には、生まれ故郷を自慢する「お国自慢」も有ります。)
ところが、こんなものは外国へ行ったら、何の役にも立ちません。
となりますと、自己が縋るところは、経済的に発展した「日本(一時は“ジャパン・イズ・1”とさえも言われた)」に、一般的日本人(「えせ文化人」も含めて)は縋らざるをえなくなります。
ですから、若し日本が3流国以下だったら、外国滞在中の「えせ文化人」の心に「愛国心」が芽生えたかどうかは、疑問です。
それに昔の日本は、お国自慢の対象である「加賀」だ「薩摩」だ「会津」だと言った国々に分裂していたのです。
そして、それら諸国を徳川家康が力で統合して、今の日本に至っているのです。
となりますと、アメリカが、現在の圧倒的な武力を用いて世界を統合してしまい、日本だ、フランスだ、中国だ、メキシコだとかの類の(正式)国名は雲散霧消してしますうでしょうか?
いえいえそんな事はないでしょう。
アメリカが武力行使したい国は、今回のイラクのような石油などの資源を有するところでしょうから。
(勿論、日本は天然資源には恵まれていませんが、優れた人的資源に恵まれています。
日産自動車の救世主カルロス・ゴーン氏は“日本企業の社員は、一旦納得すれば、やるべき仕事を迅速、かつ完璧に実行する類い希な能力を持っている”(日経BP社発行:「ゴーンが挑む7つの病」より)と日本人を評価しています)
でも、私にはアメリカは不可解です。
何故、9.11以降、未だに「ゴッド・ブレス・アメリカ」を歌い続けるのでしょうか?
神よ、アメリカにご加護を…… 山脈から平野へ、そして、海までと/天上から日夜を問わず希望の光を投げかけ 我が愛する国を導いて下さい/愛しい我が家をお守り下さい…… |
このような歌を歌いつつ、何故他国には日夜を問わず天上から爆弾を投げ落とし、彼等の国や家を破壊して平気でいられるのでしょうか?
それに彼等が神に加護を願う国土とは、一体彼等のものなのでしょうか?
先住民達(いわゆるインディアン)のものではありませんか?
この9.11事件に因んで、MITのチョムスキー教授による講演「テロに対する新しい戦争」の翻訳が紹介されている次なるホームページ(チョムスキー講演(at
MIT; 2001, Oct. 18 ))を見る事が出来ました。
今回、大規模に攻撃を受けたのは本土なのです。周辺への攻撃例なら、いくつかご存知でしょうが、今回のは特別です。 この近年、200年の間、我々アメリカは先住民族の人たちを駆逐し、ほとんど根絶しました。それは何百万人もの人々でした。 メキシコの半分を征服し、その地域一帯から略奪品を運び出しました。カリブ海、中央アメリカなおです。 時にはその向こうまで行きました。ハワイを征服し、フィリピンを征服し、数十万人のフィリピン人をその過程で殺しました。 第2次世界大戦以降、その侵略の範囲を世界中に伸ばしました。そのやり方を私がいまさら描写する必要はないでしょう。 しかしそれは常に誰か他国の人を殺すことだったのです、戦争はどこか他の国で行われ、虐殺されるのはいつも他の人たちだったのです。ここではなかったのです。本土ではなかったのです。 |
しかし、この偉大な頭脳の持ち主であるチョムスキー教授の講演の中にも、アメリカ人が先住民族の土地を奪ってしまったという罪の意識が感じられません。
まさか、アメリカ人達は、イラクに民主主義をもたらすが如くに、“インディアンに文明をもたらせてやったのだ”とでも言い張るのでしょうか?
文明とは機械文明だけではないはずです。
確かに、先住民族は鉄砲や汽車などの機械文明は持っていませんでした。
でも、彼等の精神文明には、私は敬意を表します。
もう何年も前、NHK教育テレビで紹介されたアメリカ先住民族の酋長が、土地を売るように言ってきたアメリカ大統領への返事の言葉を忘れる事が出来ませんでした。
そして、その言葉が記述されている本を探し続けてきましたが、やっと最近その本に巡り会う事が出来ました。
その本は「父は空 母は大地」(寮美千子訳:パロル社発行)と、「どうやって空気を売るというのか?」(北山耕平訳:新宿書房発行)との2冊でした。
この異なった2冊の存在理由は、その酋長の言葉が若干変化している為だそうです。
後者の本(“より原文に近い”と寮美千子氏)から、その一部を抜粋させて頂きます。
わしらの土地を買うだって?┄┄ わしらには およそ理解が出来ない どうすれば 空気を売ったり買ったりできるのか? この甘い空気も 湧きあがる泉も もともとわしらのものではないのだとしたら どうやって それを買うというのか?┄┄ わしらは 地球の一部なのだ そして地球は わしらの一部でもある 流れ落ちる川の流れの小さな泡の粒も 草原の花の蜜も 馬の汗 そして人の汗ですらも すべてが ひとつのものとして 繋がっている それが わしらの一族であり わしらの部族であり わしらの土地なのだ┄┄ 母である地球や 兄である空を 白人はまるで商品のように取り扱う 食べても食べても 満たされることのない飽くなき飢えが やがてこの地球を裸にして ただ砂漠だけを あとに残す┄┄ ┄┄わしらがこの土地を売らなくてはならないのだとしたら あなた方だって知らなくてはならない この空気が わしらにとってどれほどの価値があるものなのかを この空気が息となって伝わり 地上の一切の生命を 今日まで保ってきていることを わしの曽祖父に最初に息吹を与えた風 わしの曽祖父がひきとった最後の風 同じその風が また わしらの子供たちにも 生命を与え続けていることを すべてのものが ひとつに結ばれている すべてのものは つながっている 地球に起こることは そのまま地球の子供たちの身の上にも起こる┄┄ |
そして、最後の部分には、次のように紹介されています。
あなた方もじきに この土地にあふれるだろう しかしそのとき わしと わしに従ってきた者たちは まるで海の潮がひくように いずこへともなく 姿を消す その行く末はわしらにも謎である┄┄ |
かくも素晴らしい精神を宿した方々を駆逐し根絶して、今のアメリカがあることをアメリカ人は深く心に刻み込むべきではないでしょうか?
キリスト教徒の原罪のごとくに。
(勿論、私達、日本人も多くの国々の方々への過去行ってきた残忍な行為を、原罪として認識すべきと存じます。)
この原罪を意識すればアメリカ人は“アメリカ イズ ナンバーワン!”と声高に叫ぶことなく、もっと謙虚になり世界中から尊敬される事となるでしょう。
ところが、なんと、アメリカ大リーグのヤンキースのベンチ内では、「謙虚」と言う言葉が飛び交っていると「日刊スポーツのホームページ」に紹介されているのです。
(http://www.nikkansports.com/ns/baseball/mlb/iijima/mb-iijima-0008.html)
┄┄「ヒデキ、イツモ、ケンキョヨ。ケンキョ。ドント・チェンジ。カワッテハダメヨ」。 明るい声で叫んでいるのはアルフォンゾ・ソリーアーノ内野手(25)。96、97年と広島カープに在籍したが、残した成績は2本の安打だけだった。だが、ヤンキース入りして才能が開花した。昨年は3割、39本塁打、41盗塁(タイトル)。今季も3冠王でも取ろうかという勢いで打ちまくっている。メジャーの中で、もっとも上昇気流に乗っている選手だろう。 そのソリアーノが、いつもヤ軍のロッカーで「謙虚」という日本語を使う。するとジョンソンら他の選手も、おもしろがって意味を聞いてくる。広岡広報は「humble」と訳した。言葉は、たちまち広がっていく。歴史あり、栄光あり、何より強いヤ軍のメンバーが、口々に「ケンキョ、ケンキョ」と言い合っている。何か不思議な光景だった。 ソリアーノは言う。「代理人(団野村氏)に言われていたんだ。いつも、そういう気持ちでプレーしなさいと。意味? 分かるよ。とても、いい言葉だと思っている」。┄┄ (飯島智則) |
確かに、ソリアーノはじめヤンキースの面々は世界最高のプレーヤー達です。
だからこそ謙虚になれるのでしょう。
そして、ソリアーノや松井をはじめ大リーガーの四分の一は外国人だそうです。
更に、アメリカ人全体を考えますと、アメリカは移民の国なのですから、彼等にとっての祖国とは何処を指すのでしょうか?
ですから、「ゴッド・ブレス・アメリカ」で歌う“我が愛する国”
とは何処なのでしょうか?
そして、そもそも彼等が祈る「ゴッド」とは?キリストですか?アッラー?それとも……
となりますと、「ゴッド・ブレス・アメリカ」を歌うよりも、先ずは、アメリカ人こそが率先してジョン・レノンの「イマジン」を歌うべきではないのでしょうか?
ところが、私が購入した「ゴッド・ブレス・アメリカ」のCDの解説書には、湯川れい子氏による次のような記述が載っておりました。
……レコード・レーベルの関係で、ここには収められていないけど、湾岸戦争の時に続いて、今回も早々に放送自粛曲に指定されたジョン・レノンの「イマジン」が、やっぱり21世紀のテーマ・ソングなのだ。平和への呼びかけを持った歌が歌えなくなること自体が、とても危険なことではないだろうか。…… |
私も同感です。
ジョン・レノンの「イマジン」とても素敵です。
私は真理だと思います。私達の希望だと思います。
その精神は、先住アメリカ人の精神に相通じているように私には思えます。
こんな曲を「放送自粛曲」に指定する国が民主主義の国なのでしょうか?
不思議です。
では、この拙文の最後に「イマジン」の訳詞を掲げます。
想像してご覧 天国なんてないって事を 地獄なんてないって事を やってみれば簡単だろう 私達の上にあるのは空だけさ 想像してご覧 全ての人達は今日を生きているのだということを ね、簡単だろう その為に殺したり死んだりしなければならない国や宗教なんて無いことを想像することも 全ての人達が平和に暮らすことを想像してみようよ 財産なんか無いことを想像してみようよ 出来るよね そしたら欲張る必要なんか無くなって、飢えることもなくなるよね 人類皆兄弟 全ての人が全ての世界を分かち合うことを想像しようよ こんな事を言う私をあなた方は「夢想家」と言うかもしれない でも、こう思っているのは、私だけではないんだよ そして、いつの日かあなた方も私達に加わって 世界が一つとなってくれることを願っているのだよ |